相続放棄をしようと思ったら、相続財産には一切手をつけてはいけません!
なぜなら、相続放棄をするということは、故人の相続財産に対しては全くの赤の他人になるということだからです。
逆に、相続財産に手をつけてしまったら(例えば、預貯金を一部降ろして、使ってしまった場合など)、のちに故人の債権者からの訴えで、せっかくの相続放棄の許可が無効になってしまう場合があります。
相続財産に手をつけるということは、相続人にしかできないことなので、もはや単純承認したものと見なされてしまうのです。
車や損害保険の名義変更なども安易にしてしまわないように注意してください。
第一順位の相続人が放棄すると、次順位の相続人も、順次、相続放棄をしないといけません。
相続人となるのは?のページ →詳しくはこちら で、ご説明しましたが、相続人には順位というものがあります。
例えば、
故人が夫で、相続人が妻と子供2人の場合に、夫に多額の借金があることがわかり、妻と子供2人は相続放棄の手続きをし、無事、家庭裁判所から許可がおりた。
これで、ひと安心・・・ ではありません。
ここで、第1順位の相続人(妻と子供2人)が、全員相続放棄をしたことにより、第1順位の相続人はいなくなりました。
すると法律的には、第1順位の相続人がいなくなったので、次に第2順位の相続人を捜します。その第2順位の相続人とは、故人の両親です。
ここで、両親あるいは、一方がご健在なら、そのマイナス財産は親に引き継がれます。
当然、そうなると困るので、親にも相続放棄の手続きをとってもらいます。
そして、親の相続放棄の手続きも、無事終わり、ホッと・・・する暇はありません。
ここで、第2順位の相続人も相続放棄により、いなくなったので、この多額の借金は第3順位の相続人に移ります。第3順位の相続人とは、故人の兄弟姉妹です。第2順位の故人の両親がすでに二人とも亡くなっている場合も、第1順位からいきなり、この第3順位へと借金が引き継がれます。
故人の兄弟姉妹(さらに、兄弟姉妹のうち、故人より先に亡くなっている人がいる場合は、甥や姪が引き継ぎます)に、多額の借金を背負わせるわけにはいきませんので、当然、全員に相続放棄の手続きをとってもらいます。
ここまできて、ようやく、すべてが無事に終わります。
※相続人が第1順位の方だけで、第2順位と第3順位の方が、すでに亡くなっている場合は、第1順位の方が相続放棄をすれば、すべて完了します。
相続放棄をする場合は、このようなことを踏まえて親類縁者の方々に前もって、きちんと事情を説明し、理解を得た上で、協力して頂かなくてはいけません。
例えば、このような協力をしてもらうことによって、今後の長い親戚付き合いの中で、肩身の狭い思いをしたくないという気持ちから、頑張って故人の借金を返済していくことを選択される御家族もいらっしゃいます。
このあたりは、故人のマイナス財産(借金)の額がどの程度なのかということが重要なポイントになりますが、少しでも、返済に無理があるかなと感じられたら、相続放棄を検討されるほうが良いでしょう。
相続人には相続人自身の人生があります。
故人に対する思いや感情はいろいろあるかと思いますが、まずは自分の人生をしっかりと守って生きていくということが大切なのではないでしょうか。